スポーツ復帰前に確認したいこと
スポーツでケガをしたあと、
「もう痛くないから練習に戻っていいですか?」
と聞かれることがあります。
痛みがなくなることは、もちろん大切な回復のサインです。
しかし、
「痛みがない=ケガをする前と同じ状態」
とは限りません。
スポーツ復帰を考えるときには、痛みだけではなく、筋力や関節の動き、バランス、実際の競技動作なども確認することが大切です。
なぜ「痛くない」だけでは判断できない?
ケガをして休んでいる間には、患部の痛みが軽くなっていても、
・筋力が十分に戻っていない
・関節の動きが戻っていない
・バランス能力が低下している
・走る、跳ぶ、切り返すなどの動作が十分にできない
・再びケガをすることへの不安が残っている
といったことがあります。
例えば足首の捻挫後のスポーツ復帰について、国際的な専門家によるコンセンサスでは、痛みだけではなく、可動域・筋力・持久力・パワー・バランス・本人の安心感・ジャンプや切り返し・競技動作などを確認することが推奨されています。
つまり、
「歩いて痛くない」
と
「全力でスポーツができる」
の間には、かなり大きな差があります。

「痛みがない」だけではなく
痛み+可動域+筋力+バランス+競技動作+心理面
を確認するイメージ
スポーツ復帰は「0か100か」ではありません
ここも重要です。
ケガをしたあと、
休む → いきなり通常練習
という2段階で考える必要はありません。
スポーツ医学では、復帰を段階的な流れとして考えます。
国際コンセンサスでは、
① Return to participation
練習の一部や制限された運動に参加する
↓
② Return to sport
競技に復帰する
↓
③ Return to performance
ケガをする前と同程度、あるいはそれ以上のパフォーマンスに戻る
という考え方が示されています。
つまり、
「練習に参加できる」と「完全復帰」は同じではありません。
復帰前に確認したい5つのポイント
① 痛み
日常生活では痛くなくても、
走る
ジャンプする
急停止する
方向転換する
ボールを投げる
など、競技特有の負荷で痛みが出ることがあります。
また、運動中だけでなく、運動した後や翌日の状態も確認します。
② 関節の動き
足首、膝、肩などの動きが十分に戻っているか確認します。
痛みがなくても関節の動きが制限されたままだと、競技動作に影響する場合があります。
③ 筋力
ケガをした側の筋力が落ちていることもあります。
ただし、
「左右差が○%以内なら必ず復帰できる」
という単純なものでもありません。
競技やケガの種類によって、必要になる能力が違うからです。Return to Sportの基準には、現在も十分な科学的根拠が確立していない部分があります。
④ 実際のスポーツ動作
ここはかなり重要です。
例えば、
サッカー → ダッシュ・キック・切り返し
バスケットボール → ジャンプ・着地・方向転換
野球 → 投球・走塁
陸上 → ランニング・スプリント
など、競技によって必要な動作は違います。
足首捻挫のPAASSという復帰判断の枠組みでも、ホップ、ジャンプ、アジリティ、競技特有の動作、さらに通常のトレーニングを最後まで行えるかまで評価項目に含まれています。
⑤ 「怖くないか」も大切
身体だけではありません。
「また痛くなりそう」
「全力で踏み込むのが怖い」
という感覚が残ることがあります。
現在のReturn to Sportでは、こうした本人の自信や心理的な準備も判断材料の一つとして考えられています。
「何週間休めばいい?」だけで決めない
ケガをすると、
「捻挫だから2週間」
「肉離れだから1か月」
など、期間だけが気になるかもしれません。
もちろん組織が回復するための時間は重要です。
しかし、同じケガでも、
年齢
ケガの程度
競技
ポジション
これまでのケガ
回復状況
などによって復帰までの経過は変わります。
ハムストリング損傷についての国際コンセンサスでも、単純に期間だけでなく、症状、筋力、負荷に対する反応、ランニングや競技で必要となる能力などを確認しながら復帰を進める考え方が支持されています。
いきなり試合ではなく、負荷を段階的に戻す
例えば下肢のケガなら、
歩く
↓
軽く走る
↓
スピードを上げる
↓
ジャンプ・切り返し
↓
競技特有の動き
↓
通常練習
↓
試合
というように、負荷を段階的に戻していきます。
※実際の順序や進め方はケガや競技によって異なります。
一段階進めたときに、
痛みが出ないか
腫れが増えないか
動きが崩れないか
翌日に症状が悪化していないか
などを確認しながら進めます。

「休む→いきなり試合」ではなく、
リハビリ → 軽い運動 → 競技動作 → 通常練習 → 競技復帰
と段階的に戻すイメージ
まとめ
スポーツ復帰を考えるとき、
「痛くなくなったから大丈夫」
だけで判断するのは十分ではありません。
確認したいのは、
痛み
+ 関節の動き
+ 筋力
+ バランス・身体のコントロール
+ 競技動作
+ 本人の自信や不安
です。
そして、復帰は一度に100%へ戻すのではなく、競技に必要な負荷を段階的に戻していくことが重要です。
池上7丁目整骨院では、スポーツ外傷後の状態を確認しながら、運動や競技復帰についても一緒に考えていきます。
参考文献
Ardern CL, et al. 2016 Consensus statement on return to sport from the First World Congress in Sports Physical Therapy, Bern. Br J Sports Med. 2016;50:853-864.
Smith MD, et al. Return to sport decisions after an acute lateral ankle sprain injury: introducing the PAASS framework—an international multidisciplinary consensus. Br J Sports Med. 2021;55:1270-1276.
McCall A, et al. London International Consensus and Delphi study on hamstring injuries part 3: rehabilitation, running and return to sport. Br J Sports Med. 2023;57:278-291.







