「骨折した骨って、どうやって元に戻るんだろう?」
骨折するとギプスや固定具などで固定することがありますが、固定そのものが骨を作っているわけではありません。
私たちの身体には、骨折した部分を修復していく仕組みがあります。
今回は、骨折してから骨が修復されていくまでに、身体の中で何が起こっているのかを簡単に説明します。
骨は少しずつ修復されていきます
一般的な骨折の治癒過程は、大きく4つに分けて説明できます。
① 骨折直後:血が集まり、修復の準備が始まる ↓ ② やわらかい仮骨ができる ↓ ③ 硬い仮骨へ変わっていく ↓ ④ 時間をかけて骨が作り直される
ただし、この4段階が「今日から②」「明日から③」のようにはっきり切り替わるわけではありません。
実際には、それぞれの過程が重なりながら進んでいきます。
① 骨折直後 ― まず修復の準備が始まります
骨が折れると、骨の周りにある血管なども傷つき、骨折した部分に出血が起こります。
そこに血液が集まり、**血腫(けっしゅ)**と呼ばれる血のかたまりができます。
そして炎症反応が起こり、傷ついた組織を処理したり、修復に必要な細胞を集めたりする働きが始まります。
つまり、骨折直後の炎症も、骨が修復されていくための大切な過程の一つです。
② 骨折した部分をつなぐ「仮骨」が作られます
次に、折れた骨と骨の間をつなぐように新しい組織が作られていきます。
最初から元の骨と同じ硬さの骨ができるわけではありません。
まずは比較的やわらかい組織が作られます。
これを**軟性仮骨(なんせいかこつ)**と呼びます。
簡単にいうと、
「折れた骨同士をつなぐための仮の橋」
のようなものです。
③ 仮骨がだんだん硬くなります
その後、やわらかかった仮骨が石灰化し、徐々に硬い骨へ置き換えられていきます。
これを**硬性仮骨(こうせいかこつ)**と呼びます。
骨折した部分が少しずつ安定していく重要な時期です。
ただし、ここで重要なのが、
「痛くなくなった=骨が完全に元通り」ではない
ということです。
痛みが少なくなっていても、骨の中ではまだ修復が続いていることがあります。
自己判断で急にスポーツへ戻ったり、強い負荷をかけたりするのではなく、骨折した場所や状態に合わせて復帰を考える必要があります。
④ 最後は時間をかけて骨を作り直します
硬い仮骨ができたら、それですべて終了ではありません。
身体はその後も、余分な骨を吸収したり、新しい骨を作ったりしながら、少しずつ骨の形や構造を整えていきます。
この過程を**リモデリング(骨の作り直し)**といいます。
リモデリングは長期間続き、骨折によっては数か月から年単位で進むことがあります。
骨折はみんな同じ期間で治る?
「骨折って何週間で治りますか?」
よくある疑問ですが、すべての骨折に共通する期間はありません。
治癒までの経過は、
骨折した場所、骨折の形、ずれの程度、血流、年齢、固定や手術方法、全身状態などによって変わります。
また、喫煙は骨折後の癒合不全との関連が報告されています。大規模なシステマティックレビュー・メタ解析でも、喫煙者では非喫煙者より骨癒合しない「偽関節」の割合が高いことが報告されています。
そのため、
「○週間たったからもう大丈夫」
と期間だけで判断するのではなく、骨折の状態や経過を確認することが重要です。
なぜ骨折では固定するの?
ここまで読むと、
「身体が自分で骨を作ってくれるなら、どうして固定するの?」
と思うかもしれません。
骨が修復されていくためには、骨折部にとって適切な安定性が重要だからです。骨折部に加わる力や動きは、仮骨形成を含む治癒過程に影響します。
ただし、
「動かさなければ動かさないほど良い」わけでもありません。
必要な固定方法や期間は骨折によって異なります。
この話は少し長くなるので、次回の骨折シリーズで、
「骨折はなぜ固定するの?固定期間が長ければいいわけではない理由」
として詳しく紹介します。
まとめ
骨折した骨は、いきなり元通りになるわけではありません。
出血・炎症 ↓ やわらかい仮骨 ↓ 硬い仮骨 ↓ リモデリング
という流れを中心に、身体の中で少しずつ修復されていきます。これらは完全に独立した段階ではなく、互いに重なりながら進みます。
そして覚えておきたいのが、
「痛みが減ったこと」と「骨が十分に修復されたこと」は必ずしも同じではない
ということです。
骨折した場所や状態によって経過は異なるため、スポーツや運動への復帰についても個別に判断する必要があります。
池上7丁目整骨院では、外傷の状態や経過を確認し、骨折が疑われる場合や画像検査などが必要と考えられる場合には、医療機関への受診をご案内しています。
参考文献
・Schindeler A, et al. Bone remodeling during fracture repair: The cellular picture. Semin Cell Dev Biol. 2008. ・Maruyama M, et al. Modulation of the Inflammatory Response and Bone Healing. Front Endocrinol. 2020. ・Principles of Fracture Healing and Fixation: A Literature Review. 2024. ・Xu B, et al. The influence of smoking and alcohol on bone healing: systematic review and meta-analysis. eClinicalMedicine. 2021.