転んだとき、とっさに手をついてしまうことがあります。
そのあと手首が痛くても、
「少し動かせるから骨折ではないだろう」
「ものを持てるから大丈夫」
「それほど腫れていないから捻挫かな」
と思って、そのまま様子を見ることもあるかもしれません。
しかし、手首が動くことや、見た目の腫れが少ないことだけでは、骨折を否定できません。
転倒して手をついたあとに痛みが続く場合には、痛む場所や腫れ、動かしたときの痛みなどを確認することが大切です。
転んで手をつくと、どこを骨折する?
転倒時に手をつく外傷は、橈骨・尺骨骨折の代表的な受傷機転です。特に成人の橈骨遠位端骨折は、手をついた転倒によって生じることが多い骨折です。
また、親指側の手首にある舟状骨にも注意が必要です。
舟状骨骨折も、手をついた際に生じることがあります。
つまり「手首をひねっただけだと思った」というケースでも、
橈骨遠位端骨折や舟状骨骨折などが隠れている可能性があります。
「手首が動く=骨折していない」ではありません
骨折というと、
「全く動かせない」
「ものすごく腫れる」
「明らかに変形する」
というイメージがあるかもしれません。
もちろん、そのような症状を伴う骨折もあります。
しかし橈骨遠位端骨折では、腫れや変形が必ずみられるわけではありません。 手首を反らしたときの痛み、腫れ、変形、前腕を回したときの痛みなどが骨折を疑う所見として報告されています。
したがって、
「動かせたから骨折ではない」と自己判断するのは避けた方がよいでしょう。
痛む場所も重要です
手首全体が痛いのか、それとも特定の場所が強く痛いのかも確認します。
特に注意したい場所の一つが、親指側の手首です。
ここには舟状骨があります。
舟状骨骨折では、転倒直後より痛みが軽くなり、受診が遅れるケースもあります。
そのため、
「昨日より少し楽だから大丈夫」
だけで判断するのではなく、手をついたという受傷機転と、どこに圧痛が残っているかを合わせて考えることが重要です。
レントゲンで異常がなければ大丈夫?
ここも注意が必要です。
急性の手・手関節外傷では、まずX線検査が一般的です。ACRでは、初期画像として対象部位のX線撮影を「Usually Appropriate」としています。
しかし、
最初のX線で明らかな骨折が確認できなくても、骨折を完全には否定できない場合があります。
骨折が疑われる状態で初回X線が陰性または判断困難だった場合、ACRでは10〜14日後の再X線、造影なしMRI、造影なしCTを次の画像検査として適切としています。
またNICEでは、舟状骨骨折が疑われる場合、十分な診察のうえでMRIを第一選択の画像検査として検討することを推奨しています。
「レントゲンで異常なしだったから絶対に骨折ではない」というわけではない、という点は覚えておきたいところです。
こんなときは医療機関での評価を
転倒して手をついたあと、
痛みや腫れが強い
手首に変形がある
特定の骨の部分を押すと強く痛む
手首を動かしたときの痛みが強い
指のしびれや感覚の異常がある
指先の色や血流に異常が疑われる
症状が続いている
といった場合には、骨折やその他の組織損傷も考えて評価する必要があります。
特に皮膚が破れている骨折、神経・血管障害が疑われる状態などでは、速やかな医療機関での評価が必要です。
捻挫か骨折かは、見た目だけでは判断できません
転倒後の手首の痛みでは、
「腫れているか」
「動かせるか」
だけを見るのではなく、
どのように転んだか
どこが痛いか
どこに圧痛があるか
どの動作で痛むか
腫れや変形はないか
神経・血流に問題がないか
などを総合して確認します。
必要に応じて画像検査を行い、骨折の有無を確認することも重要です。
「動くから大丈夫」と決めつけず、転倒後に手首の痛みが強い場合や、痛みが続く場合には適切な評価を受けましょう。
▶ 手首・手の痛みについて詳しくはこちら
- American College of Radiology. ACR Appropriateness Criteria® Acute Hand and Wrist Trauma.
- NICE. Fractures (non-complex): assessment and management. NG38.
- Patel DS, Statuta SM, Ahmed N. Common Fractures of the Radius and Ulna. Am Fam Physician. 2021;103(6):345-354.