骨折すると、ギプスやシーネなどで固定することがあります。
「骨折したら、とにかく動かさない方がいい」
というイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし、骨折の治療では、単純に「長く固定すればするほど良い」というわけではありません。
骨折した場所や骨のずれ、骨折の形、年齢、治療方法などによって、必要な固定方法や期間は変わります。
今回は、なぜ骨折では固定が必要なのか、そしてなぜ固定期間が長ければいいわけではないのかを紹介します。
そもそも、なぜ骨折したところを固定するの?
骨折した骨は、前回の記事で紹介したように、
炎症
↓
やわらかい仮骨
↓
硬い仮骨
↓
リモデリング
という過程を経ながら修復されていきます。
この修復には、骨折した部分の**「安定性」**が重要です。
骨折した部分が不安定で大きく動いてしまう状態では、新しく作られている組織にも大きな力が加わります。
固定には、骨折部の位置関係を保ち、治癒に適した力学的環境を作る役割があります。

「まったく動かないほど良い」とも限りません
ここが少し難しいところです。
骨折部は、
「動けば動くほど良い」でもなく、
「完全に動かないほど良い」でもありません。
実際の骨折治療では、骨折の種類に応じて求められる安定性が異なります。
骨同士をしっかり圧着して治す方法もあれば、ある程度のコントロールされた微小な動きを許容しながら仮骨形成によって治していく方法もあります。
つまり、固定の目的は、
「何が何でも動きをゼロにすること」
ではなく、
「その骨折が修復されるために必要な安定性を確保すること」
と考えた方が分かりやすいでしょう。
では、長く固定しておけば安心?
ここでも注意が必要です。
骨折部を守るために固定が必要な時期がありますが、固定すると骨折していない周囲の関節や筋肉まで動かす機会が減ることがあります。
長期間動かさないことで、関節が動かしにくくなったり、筋力が低下したりすることがあります。
そのため、現在の骨折治療では、
「骨折部を守ること」と「必要以上に身体機能を落とさないこと」
の両方を考えることが重要になります。
実際、一部の骨折では早期から適切に運動を開始した方が、短期的な機能回復に有利であることが報告されています。例えば保存療法となった上腕骨近位部骨折では、早期リハビリテーションによって初期の機能回復が良好だったというシステマティックレビューがあります。
ただし、これは**「骨折したら早く動かした方がいい」という意味ではありません。**
「いつから動かすか」は骨折によって違います
ここは非常に重要です。
早期運動について研究されている骨折はありますが、その結果をすべての骨折に当てはめることはできません。
例えば、
・どこの骨が折れたのか
・骨折が安定しているか
・ずれがあるか
・関節面に骨折が及んでいるか
・保存療法なのか手術なのか
・どのような固定をしているか
などによって判断は変わります。
足関節骨折の術後についても早期荷重による短期機能の向上を示した研究がありますが、早期運動については術後合併症との関係も報告されており、「早ければ早いほど良い」と単純化できません。
したがって、自己判断で固定を外したり、予定より早くスポーツへ戻ったりするのは避ける必要があります。
「痛くないから動かしていい」でもありません
骨折後、
「もう痛くないから大丈夫」
と思うことがあります。
しかし、前回の記事でも紹介したように、
痛みの程度と骨の修復状態は必ずしも一致しません。
痛みがかなり減っていても、骨の内部では修復が続いていることがあります。
反対に、骨がある程度修復していても、関節の硬さや筋力低下などによって痛みや違和感が残る場合もあります。
そのため、痛みだけを基準に固定終了やスポーツ復帰を判断しないことが大切です。

骨折後は「固定」と「運動」のバランスが大切
骨折後の考え方を簡単にまとめると、
骨折直後
→ 骨折部を守り、必要な安定性を確保する
状態が安定してきたら
→ 許可された範囲で周囲の関節などを動かしていく
さらに修復が進んだら
→ 筋力や動作を徐々に戻していく
スポーツ復帰
→ 競技に必要な負荷へ段階的に戻す
という流れになります。
ただし、実際の進め方は骨折ごとに異なります。
「骨折=○週間固定」と一律に考えるのではなく、骨折の状態と治癒経過を確認しながら進めることが重要です。
まとめ
骨折で固定をする主な目的は、骨折した部分を治癒に適した状態に保つことです。
しかし、
「固定期間が長いほど骨折に良い」
とは限りません。
骨折部を守る必要がある一方で、必要以上の固定による関節の動きや筋力への影響も考える必要があります。
大切なのは、
「しっかり固定すること」ではなく、「その骨折に必要な安定性と期間を考えること」
です。
骨折が疑われる場合には、骨折の種類やずれなどを確認するために医療機関での画像検査が必要になることがあります。
池上7丁目整骨院では、外傷の状態を確認し、骨折が疑われる場合や画像検査が必要と考えられる場合には、医療機関への受診をご案内しています。
→【前回の記事:骨折した骨はどうやってくっつく?骨が治っていく過程】
参考文献
・Beeharry MW, Ahmad B. Principles of Fracture Healing and Fixation: A Literature Review. Cureus. 2024.
・Ataei M, et al. Immobilization Period for the Non-Operative Treatment of Proximal Humerus Fractures: Systematic Review and Meta-Analysis. 2024.
・Baumbach SF, et al. Immediate weight bearing without immobilization for operatively treated ankle fractures is safe – A systematic review. Foot Ankle Surg. 2023.







