「物を持つと肘の外側が痛い…これってテニス肘?日常生活でも起こる外側の肘の痛み」

「テニスをしていないのに、テニス肘になるの?」

肘の外側に痛みがある方から、よく聞かれる疑問です。

テニス肘は一般的な呼び方で、医学的には「外側上顆炎」や、近年では腱の状態を考慮して「外側肘腱障害(lateral elbow tendinopathy)」などと呼ばれます。

名前に「テニス」と付いていますが、テニスをする人だけに起こるものではありません。

物を持つ、握る、手首を使うといった日常動作で、肘の外側に痛みを感じることがあります。2022年の臨床ガイドラインでも、外側肘腱障害では握る動作などによって症状が誘発されることが特徴として扱われています。

どんなときに痛みやすい?

例えば、

・ペットボトルやフライパンを持つ
・買い物袋を持つ
・タオルを絞る
・ドアノブを回す
・パソコン作業をする
・ラケットや道具を握る

などです。

肘が痛いのに「手首?」と思うかもしれません。

肘の外側には、手首や指を動かす筋肉につながる腱があります。そのため、手首を反らしたり物を握ったりする動作でも、この部分に負荷が加わります。

 

「使いすぎ」が原因なの?

ここは少し注意が必要です。

「パソコンを使いすぎたから」
「物を持ちすぎたから」

と、一つの動作だけを原因と決めつけることはできません。

仕事上の負荷について調べたシステマティックレビューでは、手首・前腕への複数の生体力学的負荷が組み合わさることと外側肘腱障害との関連を示す研究がある一方、エビデンスには限界があります。別のレビューでは、特に前腕の回旋や複合的な負荷との関連が示されています。

つまり、

「この動作をしたからテニス肘になった」

と単純には言えません。

仕事内容、スポーツ、負荷の強さや頻度、身体の状態などを合わせて考える必要があります。

痛いならずっと安静にした方がいい?

痛みが強い時期に、痛みを繰り返し誘発する動作をそのまま続けるのは適切とは限りません。

一方で、

「痛いから一切使わない」

という考え方も一律ではありません。

2022年の外側肘痛に関する臨床ガイドラインでは、抵抗運動などを含む段階的な運動療法が治療選択肢として推奨されています。

重要なのは、

負担をゼロにすることではなく、状態を確認しながら負荷を調整すること。

日常生活や仕事を完全に止めるのが難しい場合には、痛みが出やすい動作や負荷量を確認しながら調整していきます。

サポーターを付ければ治る?

肘のサポーターを使っている方もいます。

前腕に装着する装具について調べたシステマティックレビューでは、装着直後の痛みや痛みなく握れる力について一定の効果が示されていますが、エビデンスの確実性は低いとされています。

そのため、

「サポーターを付ければ治る」

というものではありません。

仕事やスポーツを続ける際の負荷調整の一つとして使用を検討することはありますが、それだけに頼らないことも大切です。

 

肘の外側が痛ければ全部テニス肘?

これも違います。

肘の外側に痛みが出る原因は一つではありません。

そのため、

「外側が痛い=テニス肘」

と自己判断するのではなく、痛みの場所、どの動作で痛むのか、関節の動き、筋力などを確認することが重要です。

症状が強い場合や長く続く場合、外傷後から痛みがある場合、しびれや明らかな筋力低下などを伴う場合には、医療機関への相談も検討してください。

テニスをしていなくても肘の外側は痛くなります

「テニス肘」という名前からスポーツ障害と思われがちですが、日常生活や仕事で肘の外側に痛みを感じる方もいます。

大切なのは、

痛いところだけを見るのではなく、「何をすると痛むのか」「どのくらいの負荷がかかっているのか」を確認することです。

必要に応じて負荷を調整しながら、段階的に身体を使える状態を目指していきます。

▶ テニス肘など「肘の痛み」について詳しくはこちら

参考文献は以下です。

  1. Lucado AM, et al. Lateral Elbow Pain and Muscle Function Impairments: Clinical Practice Guidelines. J Orthop Sports Phys Ther. 2022;52(12):CPG1-CPG111.
  2. Curti S, et al. Elbow tendinopathy and occupational biomechanical overload: A systematic review with best-evidence synthesis. J Occup Health. 2021;63:e12186.
  3. Kean CO, et al. Evaluating the immediate effect of forearm and wrist orthoses on pain and function in individuals with lateral elbow tendinopathy: A systematic review. Musculoskelet Sci Pract. 2020;47:102147.
  4. Campos MGM, et al. Effectiveness of non-invasive therapies on pain, maximum grip strength, disability, and quality of life for lateral elbow tendinopathy: A systematic review and meta-analysis. Braz J Phys Ther. 2024;28:100596.
2026年9月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

足首の捻挫、痛みが減ったら終わり?再発を防ぐために確認したいこと

足首の捻挫は、スポーツでよくみられるケガのひとつです。

腫れや痛みが落ち着いてくると、

「もう走っても大丈夫かな?」
「痛くなければ治ったということ?」
「部活に戻っていい?」

と思う方も多いのではないでしょうか。

しかし、足首の捻挫からスポーツへ戻るときは、痛みだけを基準に判断するのは十分ではありません。

国際的な専門家によるコンセンサスでは、スポーツ復帰を考える際には、痛みだけでなく、足首の動きや筋力、バランス能力、本人の安心感、ジャンプや切り返しなどのスポーツ動作まで確認することが提案されています。

「痛くない=元通り」とは限りません

足首を捻挫すると、靱帯などの組織だけでなく、その後の足首の動きや筋力、バランス能力などに問題が残ることがあります。

日常生活で歩けるようになったとしても、

「片足で安定して立てるか」
「ジャンプして着地できるか」
「素早く方向転換できるか」

となると、まだ左右差を感じることがあります。

そのため、日常生活に戻れる状態と、スポーツに戻れる状態は同じではありません。

 

スポーツ復帰では何を確認する?

足関節捻挫後のスポーツ復帰について、国際的な専門家によって提案されたのが「PAASS」という考え方です。

確認する項目は大きく5つあります。

① Pain:痛み

スポーツ中の痛みだけでなく、その後や翌日まで含めて状態を確認します。

② Ankle impairments:足首の機能

関節の動く範囲、筋力、持久力、パワーなどを確認します。

③ Athlete perception:本人の感覚

「また捻りそうで怖い」「足首が不安定な感じがする」といった本人の感覚も重要な評価項目です。

④ Sensorimotor control:バランス・感覚

片足でのバランスや、動きながら身体をコントロールできるかなどを確認します。

⑤ Sport/functional performance:スポーツ動作

ジャンプ、着地、切り返し、競技特有の動きなどを確認し、最終的には通常の練習を行えるかをみていきます。

重要なのは、「受傷から○週間経ったから復帰」という時間だけの判断ではないことです。

なお、PAASSは「何点以上なら必ず復帰できる」という基準ではありません。何を確認すべきかを整理したフレームワークです。

リハビリは痛みを取るためだけではありません

「もう痛くないからリハビリは必要ない」

と思うかもしれません。

しかし、急性足関節捻挫後の運動療法を調べたシステマティックレビュー・メタ解析では、運動を取り入れたリハビリテーションは通常ケアと比較して、12か月時点の再受傷を減らす方向の結果が報告されています。

一方で、どの運動を何回・何週間行えば最適なのかまでは、現在の研究から一律には決められません。

そのため、状態に合わせて、

足首を動かす
→ 筋力を戻す
→ バランス能力を確認する
→ ジャンプ・着地
→ 切り返し
→ 競技動作

と段階的に負荷を上げていくことが基本になります。

 

サポーターをしていれば大丈夫?

サポーターやテーピングも選択肢のひとつですが、それだけですべてを補えるわけではありません。

アスリートを対象としたシステマティックレビュー・メタ解析では、ブレースとバランストレーニングのどちらも足関節捻挫の発生リスクを低下させたと報告されています。

つまり、

「サポーターかリハビリか」ではなく、必要に応じて組み合わせて考える

という方が実際的です。

競技、過去の捻挫歴、足首の状態などによっても判断は変わります。

一度捻挫した足だからこそ、その後が大切です

足首の捻挫は、腫れや痛みが減ると「治った」と感じやすいケガです。

しかし、スポーツ復帰では、

痛み・可動域・筋力・バランス・本人の安心感・実際のスポーツ動作

などを総合して確認することが大切です。

「歩けるから大丈夫」から、いきなり全力の練習に戻すのではなく、段階を踏んで競技動作へ戻していきましょう。

池上7丁目整骨院では、足関節捻挫などのスポーツ外傷について、ケガをした直後だけでなく、スポーツ復帰までの状態確認や運動についてもご相談いただけます。

「スポーツ障害・スポーツ外傷」

参考文献

  1. Smith MD, et al. Return to sport decisions after an acute lateral ankle sprain injury: introducing the PAASS framework—an international multidisciplinary consensus. Br J Sports Med. 2021;55:1270-1276.
  2. Wagemans J, et al. Exercise-based rehabilitation reduces reinjury following acute lateral ankle sprain: A systematic review update with meta-analysis. PLoS One. 2022.
  3. Bleakley CM, et al. Rehabilitation Exercises Reduce Reinjury Post Ankle Sprain, But the Content and Parameters of an Optimal Exercise Program Have Yet to Be Established: A Systematic Review and Meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2019;100:1367-1375.
  4. Bellows R, Wong CK. The Effect of Bracing and Balance Training on Ankle Sprain Incidence Among Athletes: A Systematic Review With Meta-analysis. Int J Sports Phys Ther. 2018;13:379-388.
2026年9月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

靴底の減り方で歩き方はわかる?外側だけ減る・左右で違うときに考えたいこと

普段履いている靴の「靴底」をじっくり見たことはありますか?

「かかとの外側だけ減っている」
「右と左で減り方が違う」
「いつも同じところに穴が開く」

こうした靴底の減り方を見て、

「歩き方が悪いのかな?」
「身体が歪んでいる?」
「インソールを入れた方がいい?」

と気になる方もいると思います。

靴底は普段の歩行や使用状況について考える一つの材料になります。

しかし、靴底の減り方だけで歩き方や身体の状態を判断することはできません。

今回は、靴底を見るときに知っておきたいポイントについて紹介します。

どうして靴底は減るの?

歩くときには、靴と地面との間にさまざまな力が加わります。

身体を支える力だけではなく、前後・左右方向への力や、靴と地面との摩擦なども生じています。

実際の研究でも、歩行時に生じる「せん断力」や必要摩擦係数と、靴底の摩耗速度との関連が報告されています。

つまり、普段どのように靴を使っているかによって、靴底の減り方に違いが出る可能性があります。

ただし、それだけで決まるわけではありません。

靴底の素材や形状、使用する路面などによっても摩耗は変わります。研究でも、路面の粗さや靴の素材などが結果に影響する可能性が指摘されています。

かかとの外側が減っていたら歩き方が悪い?

ここは特に誤解されやすいところです。

靴のかかとの外側が減っているのを見て、

「外側が減っている=歩き方が悪い」

と考える必要はありません。

歩行では、かかとから接地するときに外側寄りから接地することもあります。

そのため、かかとの外側に摩耗があるという情報だけで、異常な歩き方や特定の足の状態と判断することはできません。

「外側が減っているから○○足」

「内側が減っているから扁平足」

と靴底だけを見て決めるのも避けた方がよいでしょう。

 

左右で減り方が違う場合は?

左右差もよく相談されます。

人間の身体は完全な左右対称ではありません。

また、靴の使い方、スポーツ、仕事、歩く場所などによっても左右の摩耗に違いが出ることがあります。

そのため、

左右差がある=身体が歪んでいる

とも限りません。

一方で、左右で極端に摩耗する場所が違う場合や、いつも片方だけ極端に早く減る場合には、靴だけではなく実際の立ち方や歩き方なども一緒に確認すると、参考になることがあります。

靴底だけでは歩き方を判断できません

ここが今回一番伝えたいところです。

靴底には歩行によって生じた力が反映される可能性がありますが、単純な歩行速度や歩幅などと摩耗率との間には明確な関連が確認されなかった研究もあります。

つまり、

「この減り方だから、この歩き方をしている」

と一対一で結びつけることはできません。

足について考えるのであれば、

・足の形
・関節の動き
・立ったときの足の状態
・実際の歩き方
・使用している靴
・靴のサイズやフィット
・スポーツや仕事などの使用環境

などを合わせて確認することが大切です。

 

すり減った靴をそのまま履き続けてもいい?

靴底の「減り方」だけでなく、どのくらい減っているかにも注意が必要です。

特に靴底の溝が大きく摩耗すると、靴と床との摩擦性能が低下する可能性があります。

靴底の摩耗と滑りについて調べた研究では、アウトソールの摩耗によって摩擦が低下し、滑りや転倒リスクに影響する可能性が報告されています。

また、靴はアウトソールだけでなく、使用を続けることでミッドソールなども変化していきます。

見た目だけで交換時期を一律に決めることは難しいですが、

「靴底の溝がかなりなくなっている」
「片側だけ大きく変形している」
「以前より安定しにくい」
「靴の中で足が動く」

などがあれば、一度靴の状態を確認してみてもよいでしょう。

インソールを入れれば解決する?

ここも大切です。

靴底が偏って減っているからといって、必ずインソールが必要というわけではありません。

まず確認したいのは、現在履いている靴そのものです。

サイズが合っていなかったり、靴が大きく変形していたり、用途に合っていなかったりすれば、インソールだけを変更しても適切とは限りません。

逆に、足の状態や使用目的によっては、インソールを選択肢の一つとして考える場合もあります。

大切なのは、

「足」だけでも「靴」だけでも「インソール」だけでもなく、組み合わせて考えることです。

池上7丁目整骨院でも、インソールについてご相談いただいた場合には、足だけではなく実際に使用する靴や使用目的なども確認しています。

インソール・Formthoticsについてはこちら

ときどき靴底を見てみましょう

毎日履いている靴は、意外と自分では見ていないものです。

一度、左右の靴を並べて靴底を確認してみてください。

大切なのは、

「外側が減っているから悪い」
「左右差があるから身体が歪んでいる」

と決めつけないことです。

靴底の摩耗は、足や歩行について考える一つの情報にはなりますが、それだけですべてが分かるわけではありません。

気になる減り方がある場合には、靴だけを見るのではなく、足の状態や実際の動きも含めて確認していくことが大切です。

参考文献

  1. Hemler SL, Sider JR, Redfern MS, Beschorner KE. Gait kinetics impact shoe tread wear rate. Gait Posture. 2021;86:157-161.
  2. Griffin SC, Hemler SL, Beschorner KE. Investigating the Influence of Spatiotemporal Gait Characteristics on Shoe Wear Rate. IISE Trans Occup Ergon Hum Factors. 2022;10(1):1-6.
  3. Menz HB, Bonanno DR. Footwear comfort: a systematic search and narrative synthesis of the literature. J Foot Ankle Res. 2021;14:63.
2026年8月31日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

ストレッチは長くやるほどいい?運動前・運動後で変えたいストレッチの考え方

運動やスポーツの前後にストレッチをしている方は多いと思います。

「運動前はしっかり伸ばした方がいい」
「ストレッチをすればケガを予防できる」
「身体が硬いから長く伸ばした方がいい」

このように考えている方もいるのではないでしょうか。

しかし、ストレッチは長くやればやるほど良いわけではありません。

また、「これからスポーツをする」のか「柔軟性を高めたい」のかによっても、適した方法は変わります。

今回は、運動前・運動後のストレッチについて、現在の研究をもとに整理してみます。

ストレッチには種類があります

まず知っておきたいのが、ストレッチはすべて同じではないということです。

代表的なのが「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」です。

静的ストレッチは、筋肉を伸ばした姿勢で一定時間保持する方法です。

例えば、立った状態で前屈して太ももの裏を伸ばしたり、ふくらはぎを伸ばした状態をキープしたりする方法です。

一方の動的ストレッチは、身体を動かしながら関節や筋肉を動かしていく方法です。

脚を前後に振る、股関節を動かす、腕を回すなど、これから行う運動に近い動きを取り入れることもあります。

 

運動前に静的ストレッチをしてはいけない?

「運動前の静的ストレッチは筋力が落ちるからダメ」

と聞いたことがある方もいるかもしれません。

これは少し単純化されています。

過去の研究では、運動直前に一つの筋肉を長時間静的に伸ばすと、直後の筋力や瞬発的なパフォーマンスが一時的に低下する可能性が示されています。特に長時間の静的ストレッチほど影響が出やすい傾向があります。

一方、2026年に発表されたレビューでは、60秒以下の短時間のストレッチでは、パフォーマンスへの影響はごく小さいという結果が示されています。

そのため、

「運動前は静的ストレッチ禁止」

と考える必要はありません。

ただ、これからダッシュ・ジャンプ・切り返しなどを行うのであれば、静的ストレッチだけでウォーミングアップを終わらせるより、身体を動かしながら準備していく方が実際の運動につなげやすいでしょう。

運動前は「動きながら準備する」

スポーツ前には、

軽いジョギング

関節を動かす

動的ストレッチ

競技に近い動き

徐々にスピードを上げる

というように、身体を段階的に運動へ近づけていく方法があります。

動的ストレッチについては、直後の柔軟性を小さいながら高めることが示されており、スプリントやジャンプなどのパフォーマンスにも適したウォームアップ方法の一つと考えられています。

ここで大切なのは、

「ストレッチをしたから準備完了」ではない

ということです。

実際の競技で走るのであれば走る準備を、ジャンプするのであればジャンプする準備を段階的に行うことも重要です。

身体を柔らかくしたいなら静的ストレッチは意味がある?

あります。

静的ストレッチそのものが悪いわけではありません。

継続的なストレッチによって関節可動域(ROM)が向上することは、複数の研究で確認されています。2023年のメタ解析でも、継続的なストレッチによって可動域が増加し、特に静的ストレッチやPNFストレッチで改善が認められています。

さらに2025年の大規模なシステマティックレビュー・メタ解析では、189研究・6,654人を解析し、静的ストレッチによって短期的にも長期的にも柔軟性が向上することが示されています。

つまり、

運動前のウォームアップ

柔軟性を高めるためのストレッチ

は、目的を分けて考えた方が分かりやすいのです。

運動後のストレッチは?

運動後にゆっくりストレッチすること自体を否定する必要はありません。

運動後に身体を落ち着かせたり、柔軟性を目的として静的ストレッチを取り入れたりすることはできます。

ただし、

「運動後にストレッチをすればケガを防げる」

とまでは言えません。

ストレッチ単独によるスポーツ外傷予防については、研究では明確な予防効果が確認されていません。複数のRCTをまとめたメタ解析でも、ストレッチ単独ではスポーツ外傷の発生率を有意に減らしませんでした。

したがって、ストレッチだけにケガ予防を任せるのではなく、筋力やバランス、競技に必要な動作、練習量なども含めて考える必要があります。

 

「身体が硬い=ケガをする」とも限りません

これもよくある誤解です。

柔軟性は身体機能の一つですが、

柔らかければ柔らかいほどケガをしない

という単純な関係ではありません。

スポーツによって必要な可動域も異なります。

大切なのは、競技や日常生活で必要な範囲を動かせて、その範囲で身体をコントロールできることです。

そのため、ストレッチだけではなく、筋力トレーニングやバランストレーニング、競技動作なども含めて考えていく必要があります。

ストレッチは「目的」で使い分けましょう

ストレッチは、

「とりあえず長く伸ばせばいい」

というものではありません。

運動前なら、身体を動かしながらこれから行うスポーツへ準備していく。

柔軟性を高めたいなら、静的ストレッチを継続的に取り入れる。

そしてケガの予防を考えるなら、ストレッチだけではなく筋力やバランス、ウォーミングアップ、運動量なども含めて考える。

このように、目的に合わせて使い分けることが大切です。

池上7丁目整骨院では、スポーツや日常生活での身体の状態を確認しながら、運動やセルフケアについてもお伝えしています。

「どこをストレッチすればいいのか分からない」
「運動前は何をしたらいい?」
「身体が硬いのが気になる」

といった場合もご相談ください。

スポーツ障害・スポーツ外傷についてはこちら

ここに既存ページへの内部リンクを入れます。

参考文献

  1. Takeuchi K, et al. Optimising the Dose of Static Stretching to Improve Flexibility: A Systematic Review, Meta-analysis and Multivariate Meta-regression. Sports Med. 2025.
  2. Behm DG, et al. Effect of acute static stretch on maximal muscle performance: a systematic review. Scand J Med Sci Sports. 2013;23:131–148.
  3. Albrecht K, et al. How long should athletes with high range of motion demands stretch? Acute stretching durations for flexibility and performance: a systematic review. 2026.
  4. Warneke K, et al. Chronic effects of stretching on range of motion with consideration of potential moderating variables: a systematic review with meta-analysis. J Sport Health Sci. 2024;13:186–194.
  5. Lauersen JB, et al. The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med. 2014;48:871–877
2026年8月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

肉離れは揉んでもいい?ストレッチはいつから?受傷直後に気をつけたいこと

スポーツ中に急に太ももやふくらはぎが痛くなり、

「肉離れかもしれない」

と思った経験はありませんか?

肉離れをしたときによく聞かれるのが、

「硬くならないように揉んだ方がいい?」
「ストレッチで伸ばした方がいい?」
「痛みが減ったら運動していい?」

という質問です。

肉離れは、ただ安静にしていればよいわけでも、早くから強く揉んだり伸ばしたりすればよいわけでもありません。

今回は、肉離れを疑ったときに気をつけたいことと、スポーツ復帰までの考え方について紹介します。

肉離れとは?

肉離れは、ダッシュやジャンプ、急な切り返しなどによって筋肉に大きな力が加わったときに起こる筋損傷の一つです。

スポーツでは特に、

・太ももの裏(ハムストリングス)
・ふくらはぎ
・太ももの前

などにみられます。

損傷の程度はさまざまで、軽い痛みだけの場合もあれば、歩くのが難しくなったり、腫れや皮下出血が出たりすることもあります。

また、「歩けるから軽い」とは限りません。

どの筋肉の、どの部分を傷めているのかによって、その後のリハビリやスポーツ復帰の進め方も変わります。

 

肉離れをした直後に揉んでもいい?

痛みが強い部分を、自己判断で強く揉むことはおすすめしません。

「硬くなっているからほぐした方がいい」と考えてしまいがちですが、受傷直後は筋肉が損傷している可能性があります。

特に腫れや皮下出血、強い圧痛がある場合には、無理に刺激を加えない方がよいでしょう。

一方で、

「肉離れをしたら、痛みが完全になくなるまで一切動かさない」

という考え方も現在のリハビリの考え方とは少し異なります。

ハムストリング損傷に関する国際コンセンサスでは、初期には損傷部への大きな伸張負荷や急激な負荷を避けながら、その後は症状や筋力、負荷に対する反応などを確認して段階的に運動を進めることが重視されています。

ストレッチはいつから?

ここで大切なのは、

「受傷から○日経ったからストレッチを始める」

と日数だけで決めないことです。

肉離れといっても、損傷した場所や程度は同じではありません。

実際、国際コンセンサスでも、ハムストリング損傷後の柔軟性トレーニングをいつ開始するかについて明確な合意は得られていません。

そのため、

「3日経ったから伸ばそう」

ではなく、

その時点でどのくらい動かせるのか、痛みはどう変化しているのか、どの程度の負荷に耐えられるのか

を確認しながら進めることが重要です。

痛みを我慢して強く伸ばす必要はありません。

痛みが少しでもあったら運動してはいけない?

これも「痛みがある=運動禁止」と単純には決められません。

急性ハムストリング損傷を対象にした研究では、痛みを出さない範囲でリハビリを行ったグループと、一定の痛みを許容しながら行ったグループを比較しても、スポーツ復帰までの期間に明確な差はありませんでした。

ただし、

「痛くても我慢して運動していい」

という意味ではありません。

どの運動で痛むのか、運動後に症状が悪化しないか、筋力が戻っているかなどを確認しながら負荷を調整します。

特に全力に近いスプリントについては、国際コンセンサスでは痛みなく走れることを重視する意見が支持されています。

肉離れのリハビリは「ストレッチだけ」ではありません

肉離れというと、

「筋肉が硬くなったから伸ばさないと」

と思われることがあります。

しかし、スポーツ復帰を考えるなら、柔軟性だけでは十分ではありません。

状態に応じて、

筋力トレーニング

筋肉を伸ばされた状態でも力を発揮する練習

ジョギング

ランニング

スプリント

切り返しやジャンプなどの競技動作

といったように、実際のスポーツで必要になる負荷へ段階的に近づけていくことが重要です。

特にハムストリング損傷では、ランニングやスプリントそのものもリハビリの重要な要素と考えられています。

また、「筋肉を伸ばしながら力を出す運動は早く始めれば始めるほどよい」というわけでもありません。

MRIで確認された急性ハムストリング損傷を対象に、こうした運動を早期から開始した場合と、ランニング能力が戻ってから開始した場合を比較したRCTでは、スポーツ復帰までの期間や再受傷率に明確な差は認められませんでした。

 

痛みがなくなったらスポーツ復帰していい?

痛みがなくなったことは、スポーツ復帰を考えるうえで大切な要素の一つです。

しかし、

「痛くない=元通り」

とは限りません。

筋力が十分に戻っているか、走れるか、スピードを上げられるか、競技特有の動きに対応できるかなども確認する必要があります。

2023年に発表されたハムストリング損傷に関する国際コンセンサスでも、単純な経過日数ではなく、症状・筋力・ランニング能力・競技で必要とされる能力などを総合して復帰を判断する考え方が示されています。

こんな症状がある場合は状態を確認しましょう

肉離れだと思っていても、筋肉だけの問題とは限りません。

・歩くのが難しい
・腫れや皮下出血が強い
・力が入りにくい
・筋肉にへこみや明らかな左右差を感じる
・痛みが強い
・症状がなかなか改善傾向を示さない
・ケガを繰り返している

このような場合には、無理に運動を続けず、状態を確認することをおすすめします。

肉離れは「休むだけ」でも「伸ばすだけ」でもありません

肉離れをすると、

「とにかく安静」
「とにかくストレッチ」
「硬いから揉む」

となりがちですが、大切なのは損傷の状態に合わせて負荷を戻していくことです。

特にスポーツ復帰を目指す場合には、痛みだけではなく、筋力やランニング、競技動作まで段階的に確認していく必要があります。

池上7丁目整骨院では、スポーツによるケガについて、状態を確認しながら運動や競技復帰までの進め方を考えていきます。

「肉離れかもしれない」
「いつから走っていいのか分からない」
「ストレッチしていいのか分からない」

という場合はご相談ください。

「スポーツ障害・スポーツ外傷」についてはこちら

参考文献

  1. Paton BM, et al. London International Consensus and Delphi study on hamstring injuries part 3: rehabilitation, running and return to sport. Br J Sports Med. 2023;57:278-291.
  2. Hickey JT, et al. Pain-Free Versus Pain-Threshold Rehabilitation Following Acute Hamstring Strain Injury: A Randomized Controlled Trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2020;50(2):91-103.
  3. Vermeulen R, et al. Early versus delayed lengthening exercises for acute hamstring injury in male athletes: a randomised controlled clinical trial. Br J Sports Med. 2022;56(14):792-800.
2026年8月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

朝起きたら首が痛い…「寝違え」って何?

無理に揉んだり伸ばしたりして大丈夫?

朝起きたとき、

「首が痛くて振り向けない」
「片側だけ首がつっぱる」
「寝違えたみたいで動かすと痛い」

という経験はありませんか?

一般的にこうした状態を「寝違え」と呼びます。

ただし、「寝違え」は正式な病名ではありません。

寝ている間の姿勢や前日の疲労、首周囲の筋肉や関節への負担など、いくつかの要因が関係して急に首が痛くなった状態をまとめて呼んでいる言葉です。

寝違え=「寝相が悪かった」だけではありません

寝違えると、

「変な姿勢で寝たからだ」

と思いがちです。

もちろん、寝ている姿勢がきっかけになることはあります。

しかし、首の痛みは姿勢だけで決まるものではありません。

前日の運動や仕事で首・肩周囲に負担がかかっていたり、睡眠不足やストレスなど複数の要因が関係することもあります。

そのため、

「枕が悪いから寝違えた」

と一つの原因だけに決めつけるのは適切ではありません。

痛いときは首を動かさない方がいい?

強く痛む方向へ無理に動かす必要はありません。

ただし、一般的な急性の首の痛みでは、長期間まったく動かさないより、痛みの許す範囲で日常生活を続けたり、少しずつ動かしたりすることが勧められています。

例えば、

・痛くない範囲でゆっくり首を動かす
・肩を軽く動かす
・無理のない範囲で普段の生活を続ける

といった方法です。

「痛いから何日も首を固定してまったく動かさない」という対応が、すべての寝違えに必要なわけではありません。

強く揉めば早く楽になる?

ここも注意が必要です。

急に首が痛くなった直後に、

強く揉む
無理にストレッチする
首を勢いよくひねる

といったことは避けた方がよいでしょう。

2025年の非特異的頸部痛ガイドラインでは、急性期の首痛に対するマッサージ単独は推奨されておらず、活動性を保つことやセルフマネジメントが重視されています。

手技療法についても、「それだけで治す」というより、運動やセルフマネジメントと組み合わせる考え方が現在の主流です。近年のレビューでも、手技療法と運動を組み合わせることで機能改善が期待できる一方、研究の質や対象によって効果の確実性には幅があります。

温める?冷やす?

これもよく聞かれます。

「寝違えは必ず冷やす」
「温めれば必ず治る」

という決まりはありません。

軽い首の痛みでは、自分が楽に感じる方法を使うことがありますが、温熱や冷却だけで寝違えを治すという強い根拠があるわけではありません。

そのため、まずは無理に刺激を加えず、痛みの状態を見ながら日常生活を続けることを優先します。

こんな症状があるときは注意

一般的な寝違えのように見えても、次のような場合は「ただの寝違え」と決めつけない方がよいでしょう。

  • 腕や手に強いしびれがある
  • 手や腕に力が入りにくい
  • 転倒や交通事故などの外傷後に痛くなった
  • 発熱を伴っている
  • 夜間も強い痛みが続く
  • 時間とともに急激に悪化している
  • 歩きにくさや手先の動かしにくさがある

このような場合には、医療機関での評価が必要になることがあります。急性頸部痛でも、運動麻痺、夜間痛、明らかな外傷などがある場合には、単純な非特異的頸部痛とは分けて考える必要があります。

 

寝違えを繰り返す場合は?

何度も寝違える場合には、

「毎回枕のせい」

と考えるだけでは不十分かもしれません。

普段の仕事やスマートフォンの使用時間、運動量、首や肩の動き、睡眠環境などを一度見直してみることも大切です。

慢性的な首の痛みについては、運動療法が推奨されています。

まとめ

「寝違え」は正式な病名ではなく、朝起きたときなどに急に起こる首の痛みを一般的に表した言葉です。

大切なのは、

痛いからといって強く揉まない
無理に首を伸ばしたりひねったりしない
必要以上に安静にしすぎない
痛みの許す範囲で少しずつ動く

ということです。

また、しびれや筋力低下、強い夜間痛、外傷後の痛みなどがある場合には、単純な寝違え以外の原因も考える必要があります。

池上7丁目整骨院では、首の痛みについて、動きや症状の出方などを確認し、必要に応じて医療機関への受診をご案内しています。

参考文献

・Clinical Practice Guideline: Nonspecific Neck Pain. 2025.
・Chacko N, et al. Manual therapy with exercise for neck pain. Cochrane Database Syst Rev. 2025.
・Manual physical therapy for neck disorders: an umbrella review. 2024/2025.

2026年8月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

ケガのあと、痛みがなくなったら運動していい?

スポーツ復帰前に確認したいこと

スポーツでケガをしたあと、

「もう痛くないから練習に戻っていいですか?」

と聞かれることがあります。

痛みがなくなることは、もちろん大切な回復のサインです。

しかし、

「痛みがない=ケガをする前と同じ状態」

とは限りません。

スポーツ復帰を考えるときには、痛みだけではなく、筋力や関節の動き、バランス、実際の競技動作なども確認することが大切です。

なぜ「痛くない」だけでは判断できない?

ケガをして休んでいる間には、患部の痛みが軽くなっていても、

・筋力が十分に戻っていない
・関節の動きが戻っていない
・バランス能力が低下している
・走る、跳ぶ、切り返すなどの動作が十分にできない
・再びケガをすることへの不安が残っている

といったことがあります。

例えば足首の捻挫後のスポーツ復帰について、国際的な専門家によるコンセンサスでは、痛みだけではなく、可動域・筋力・持久力・パワー・バランス・本人の安心感・ジャンプや切り返し・競技動作などを確認することが推奨されています。

つまり、

「歩いて痛くない」

「全力でスポーツができる」

の間には、かなり大きな差があります。

「痛みがない」だけではなく
痛み+可動域+筋力+バランス+競技動作+心理面
を確認するイメージ


スポーツ復帰は「0か100か」ではありません

ここも重要です。

ケガをしたあと、

休む → いきなり通常練習

という2段階で考える必要はありません。

スポーツ医学では、復帰を段階的な流れとして考えます。

国際コンセンサスでは、

① Return to participation
練習の一部や制限された運動に参加する

② Return to sport
競技に復帰する

③ Return to performance
ケガをする前と同程度、あるいはそれ以上のパフォーマンスに戻る

という考え方が示されています。

つまり、

「練習に参加できる」と「完全復帰」は同じではありません。


復帰前に確認したい5つのポイント

① 痛み

日常生活では痛くなくても、

走る
ジャンプする
急停止する
方向転換する
ボールを投げる

など、競技特有の負荷で痛みが出ることがあります。

また、運動中だけでなく、運動した後や翌日の状態も確認します。

② 関節の動き

足首、膝、肩などの動きが十分に戻っているか確認します。

痛みがなくても関節の動きが制限されたままだと、競技動作に影響する場合があります。

③ 筋力

ケガをした側の筋力が落ちていることもあります。

ただし、

「左右差が○%以内なら必ず復帰できる」

という単純なものでもありません。

競技やケガの種類によって、必要になる能力が違うからです。Return to Sportの基準には、現在も十分な科学的根拠が確立していない部分があります。

④ 実際のスポーツ動作

ここはかなり重要です。

例えば、

サッカー → ダッシュ・キック・切り返し
バスケットボール → ジャンプ・着地・方向転換
野球 → 投球・走塁
陸上 → ランニング・スプリント

など、競技によって必要な動作は違います。

足首捻挫のPAASSという復帰判断の枠組みでも、ホップ、ジャンプ、アジリティ、競技特有の動作、さらに通常のトレーニングを最後まで行えるかまで評価項目に含まれています。

⑤ 「怖くないか」も大切

身体だけではありません。

「また痛くなりそう」

「全力で踏み込むのが怖い」

という感覚が残ることがあります。

現在のReturn to Sportでは、こうした本人の自信や心理的な準備も判断材料の一つとして考えられています。


「何週間休めばいい?」だけで決めない

ケガをすると、

「捻挫だから2週間」

「肉離れだから1か月」

など、期間だけが気になるかもしれません。

もちろん組織が回復するための時間は重要です。

しかし、同じケガでも、

年齢
ケガの程度
競技
ポジション
これまでのケガ
回復状況

などによって復帰までの経過は変わります。

ハムストリング損傷についての国際コンセンサスでも、単純に期間だけでなく、症状、筋力、負荷に対する反応、ランニングや競技で必要となる能力などを確認しながら復帰を進める考え方が支持されています。


いきなり試合ではなく、負荷を段階的に戻す

例えば下肢のケガなら、

歩く

軽く走る

スピードを上げる

ジャンプ・切り返し

競技特有の動き

通常練習

試合

というように、負荷を段階的に戻していきます。

※実際の順序や進め方はケガや競技によって異なります。

一段階進めたときに、

痛みが出ないか
腫れが増えないか
動きが崩れないか
翌日に症状が悪化していないか

などを確認しながら進めます。

 

「休む→いきなり試合」ではなく、

リハビリ → 軽い運動 → 競技動作 → 通常練習 → 競技復帰

と段階的に戻すイメージ


まとめ

スポーツ復帰を考えるとき、

「痛くなくなったから大丈夫」

だけで判断するのは十分ではありません。

確認したいのは、

痛み
+ 関節の動き
+ 筋力
+ バランス・身体のコントロール
+ 競技動作
+ 本人の自信や不安

です。

そして、復帰は一度に100%へ戻すのではなく、競技に必要な負荷を段階的に戻していくことが重要です。

池上7丁目整骨院では、スポーツ外傷後の状態を確認しながら、運動や競技復帰についても一緒に考えていきます。

→【関連記事:スポーツ障害・スポーツ外傷】

参考文献

Ardern CL, et al. 2016 Consensus statement on return to sport from the First World Congress in Sports Physical Therapy, Bern. Br J Sports Med. 2016;50:853-864.

Smith MD, et al. Return to sport decisions after an acute lateral ankle sprain injury: introducing the PAASS framework—an international multidisciplinary consensus. Br J Sports Med. 2021;55:1270-1276.

McCall A, et al. London International Consensus and Delphi study on hamstring injuries part 3: rehabilitation, running and return to sport. Br J Sports Med. 2023;57:278-291.

2026年8月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

インソールって市販品でもいい?調整できるインソールとの違い

「インソールを使ってみたいけど、市販のものでいいの?」

「高いインソールの方が良いの?」

インソール売り場を見ると、数千円の市販品から、足に合わせて調整するタイプまでさまざまです。

値段が違うと、

「高いものの方が効果も高いのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、現在の研究を見ると、そこまで単純ではありません。

市販インソールにもメリットがあります

市販インソールの大きな特徴は、

・比較的手頃な価格
・すぐに購入できる
・さまざまな種類から選べる

という点です。

「まずインソールを試してみたい」

という場合には、市販品も十分選択肢になります。

そして重要なのは、市販品よりカスタムメイドの方が必ず優れているとは言えないことです。

例えば、足底のかかとの痛みを対象としたシステマティックレビューでは、カスタムメイドと既製品を比較して、痛みや機能に明確な差は確認されませんでした。

つまり、

「市販品だから効果がない」
「高価だから効果が高い」

という考え方は適切ではありません。

 

では、調整できるインソールは何が違う?

調整できるタイプの特徴は、足・靴・使用目的に合わせて形や当たり方を調整できることです。

例えば、

「この部分だけ当たりが強い」
「この靴で使うと違和感がある」
「スポーツ用として使いたい」

といった場合に、状態を確認しながら調整できるタイプがあります。

ただし、ここでも、

「調整できる=必ず症状が改善する」

という意味ではありません。

インソールの形状や靴との組み合わせによって、足底にかかる圧や下肢の筋活動が変化することは研究で確認されていますが、その変化がすべての人の症状改善につながるわけではありません。

つまり調整型の価値は、

「高級だから」ではなく、「使用する人や靴に合わせて調整できる余地があること」

にあります。

症状によってエビデンスの強さも違います

インソールは、すべての足の問題に同じように効果が確認されているわけではありません。

例えば成人の扁平足については、インソールがよく使われていますが、2021年のシステマティックレビューでは、研究数や研究の質が十分ではなく、効果について確かな結論を出せないとされています。

一方、中足部痛など一部の症状では、装具によって足底圧が変化することを示した研究があります。

このため、

「扁平足だからインソール」
「足が痛いからインソール」

と単純に決めるのではなく、症状や目的を確認する必要があります。

インソールを選ぶ前に確認したい4つ

では、実際に何を基準に選べばよいのでしょうか。

まず確認したいのは次の4つです。

① 足の状態

痛みや違和感がある場所、足の形、左右差などを確認します。

② 靴

サイズ、幅、かかとの収まり、インソールを入れるスペースなどを確認します。

→【関連記事:インソールを選ぶ前に知っておきたい「靴との相性」】

③ 使用目的

普段履きなのか、仕事なのか、ランニングや競技スポーツなのかによって求めるものは変わります。

④ 実際に使ったときの感覚

履いてみて、

「どこかが強く当たる」
「靴が窮屈になった」
「違和感が続く」

場合には、インソールだけでなく靴との組み合わせも見直します。

市販品と調整型、どちらを選べばいい?

ここで初めて比較します。

市販品が選択肢になりやすいケース

・まず手軽に試してみたい
・費用を抑えたい
・軽いサポートを目的としている

調整できるタイプを検討するケース

・使用する靴やスポーツがある程度決まっている
・市販品を使って違和感があった
・足や靴の状態を確認しながら調整したい
・使用後の状態を見ながら微調整したい

ただし、これは「どちらが優れているか」ではなく、目的の違いです。

インソールだけですべて解決するわけではありません

ここも大切です。

足の痛みやスポーツ時の不調には、

・運動量
・靴
・筋力
・関節の動き
・ケガの有無
・競技特性

など、さまざまな要因が関係します。

インソールはその中の一つの選択肢です。

必要に応じて、

靴の見直し
+ 運動
+ 身体の使い方
+ インソール

を組み合わせて考えます。

 

まとめ

インソール選びで大切なのは、

「高いものを選ぶこと」ではありません。

市販品で十分な場合もありますし、足や靴、使用目的に合わせて調整できるタイプが適している場合もあります。

現在の研究でも、カスタムメイドが既製品より常に優れているとは言えません。

だからこそ、

足の状態
+ 靴
+ 使用目的
+ 実際の使用感

を確認しながら選ぶことが大切です。

池上7丁目整骨院では、インソールだけを見るのではなく、足や普段使用している靴、スポーツシューズなども含めて状態を確認しながら考えていきます。

参考文献

・Whittaker GA, et al. Foot orthoses for plantar heel pain: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2018.
・Rasenberg N, et al. Efficacy of foot orthoses for the treatment of plantar heel pain: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2018.
・Reeves J, et al. A systematic review of the effect of footwear, foot orthoses and taping on lower limb muscle activity during walking and running. Prosthet Orthot Int. 2019.
・Herchenröder M, et al. Evidence for foot orthoses for adults with flatfoot: a systematic review. J Foot Ankle Res. 2021.

2026年8月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

骨折はなぜ固定するの?長く固定すればいいわけではない理由

骨折すると、ギプスやシーネなどで固定することがあります。

「骨折したら、とにかく動かさない方がいい」

というイメージを持っている方も多いかもしれません。

しかし、骨折の治療では、単純に「長く固定すればするほど良い」というわけではありません。

骨折した場所や骨のずれ、骨折の形、年齢、治療方法などによって、必要な固定方法や期間は変わります。

今回は、なぜ骨折では固定が必要なのか、そしてなぜ固定期間が長ければいいわけではないのかを紹介します。

そもそも、なぜ骨折したところを固定するの?

骨折した骨は、前回の記事で紹介したように、

炎症

やわらかい仮骨

硬い仮骨

リモデリング

という過程を経ながら修復されていきます。

この修復には、骨折した部分の**「安定性」**が重要です。

骨折した部分が不安定で大きく動いてしまう状態では、新しく作られている組織にも大きな力が加わります。

固定には、骨折部の位置関係を保ち、治癒に適した力学的環境を作る役割があります。

 

「まったく動かないほど良い」とも限りません

ここが少し難しいところです。

骨折部は、

「動けば動くほど良い」でもなく、
「完全に動かないほど良い」でもありません。

実際の骨折治療では、骨折の種類に応じて求められる安定性が異なります。

骨同士をしっかり圧着して治す方法もあれば、ある程度のコントロールされた微小な動きを許容しながら仮骨形成によって治していく方法もあります。

つまり、固定の目的は、

「何が何でも動きをゼロにすること」

ではなく、

「その骨折が修復されるために必要な安定性を確保すること」

と考えた方が分かりやすいでしょう。

では、長く固定しておけば安心?

ここでも注意が必要です。

骨折部を守るために固定が必要な時期がありますが、固定すると骨折していない周囲の関節や筋肉まで動かす機会が減ることがあります。

長期間動かさないことで、関節が動かしにくくなったり、筋力が低下したりすることがあります。

そのため、現在の骨折治療では、

「骨折部を守ること」と「必要以上に身体機能を落とさないこと」

の両方を考えることが重要になります。

実際、一部の骨折では早期から適切に運動を開始した方が、短期的な機能回復に有利であることが報告されています。例えば保存療法となった上腕骨近位部骨折では、早期リハビリテーションによって初期の機能回復が良好だったというシステマティックレビューがあります。

ただし、これは**「骨折したら早く動かした方がいい」という意味ではありません。**

「いつから動かすか」は骨折によって違います

ここは非常に重要です。

早期運動について研究されている骨折はありますが、その結果をすべての骨折に当てはめることはできません。

例えば、

・どこの骨が折れたのか
・骨折が安定しているか
・ずれがあるか
・関節面に骨折が及んでいるか
・保存療法なのか手術なのか
・どのような固定をしているか

などによって判断は変わります。

足関節骨折の術後についても早期荷重による短期機能の向上を示した研究がありますが、早期運動については術後合併症との関係も報告されており、「早ければ早いほど良い」と単純化できません。

したがって、自己判断で固定を外したり、予定より早くスポーツへ戻ったりするのは避ける必要があります。

「痛くないから動かしていい」でもありません

骨折後、

「もう痛くないから大丈夫」

と思うことがあります。

しかし、前回の記事でも紹介したように、

痛みの程度と骨の修復状態は必ずしも一致しません。

痛みがかなり減っていても、骨の内部では修復が続いていることがあります。

反対に、骨がある程度修復していても、関節の硬さや筋力低下などによって痛みや違和感が残る場合もあります。

そのため、痛みだけを基準に固定終了やスポーツ復帰を判断しないことが大切です。

 

骨折後は「固定」と「運動」のバランスが大切

骨折後の考え方を簡単にまとめると、

骨折直後
→ 骨折部を守り、必要な安定性を確保する

状態が安定してきたら
→ 許可された範囲で周囲の関節などを動かしていく

さらに修復が進んだら
→ 筋力や動作を徐々に戻していく

スポーツ復帰
→ 競技に必要な負荷へ段階的に戻す

という流れになります。

ただし、実際の進め方は骨折ごとに異なります。

「骨折=○週間固定」と一律に考えるのではなく、骨折の状態と治癒経過を確認しながら進めることが重要です。

まとめ

骨折で固定をする主な目的は、骨折した部分を治癒に適した状態に保つことです。

しかし、

「固定期間が長いほど骨折に良い」

とは限りません。

骨折部を守る必要がある一方で、必要以上の固定による関節の動きや筋力への影響も考える必要があります。

大切なのは、

「しっかり固定すること」ではなく、「その骨折に必要な安定性と期間を考えること」

です。

骨折が疑われる場合には、骨折の種類やずれなどを確認するために医療機関での画像検査が必要になることがあります。

池上7丁目整骨院では、外傷の状態を確認し、骨折が疑われる場合や画像検査が必要と考えられる場合には、医療機関への受診をご案内しています。

→【前回の記事:骨折した骨はどうやってくっつく?骨が治っていく過程】

参考文献

・Beeharry MW, Ahmad B. Principles of Fracture Healing and Fixation: A Literature Review. Cureus. 2024.
・Ataei M, et al. Immobilization Period for the Non-Operative Treatment of Proximal Humerus Fractures: Systematic Review and Meta-Analysis. 2024.
・Baumbach SF, et al. Immediate weight bearing without immobilization for operatively treated ankle fractures is safe – A systematic review. Foot Ankle Surg. 2023.

2026年8月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院

インソールを選ぶ前に知っておきたい「靴との相性」

「インソールを入れれば、どんな靴でも同じ?」

「今履いている靴に、そのままインソールを入れて大丈夫?」

インソールを選ぶとき、インソールそのものに目が向きがちですが、実は一緒に考えたいのが**「靴との相性」**です。

どんなインソールでも、すべての靴に同じように使えるわけではありません。

今回は、インソールを使う前に知っておきたい「靴との関係」について、わかりやすく紹介します。

インソールだけを見て選ばない

インソールは、靴の中に入れて使うものです。

そのため、

「良さそうなインソールを選べばそれでOK」

というわけではありません。

靴のサイズや形、かかと周りの作り、靴の中の広さなどによって、インソールを入れたときの状態は変わります。

例えば、もともと足に対して小さい靴に厚いインソールを入れれば、さらに靴の中が狭くなることがあります。

反対に、靴自体が大きすぎれば、インソールだけでサイズの問題をすべて解決できるわけでもありません。

 

まず確認したいのは「靴のサイズ」

「いつも26cmだから今回も26cm」

という選び方をしている方も多いと思います。

しかし、同じ26cmと書かれていても、メーカーやモデルによって靴の形や幅、つま先のスペースなどは異なります。

また、

「足の実際の長さ=そのまま靴のサイズ」

でもありません。

つま先にはある程度の余裕が必要ですし、幅や甲の高さなども関係します。

そのため、インソールを考える前に、そもそも今履いている靴が足に合っているかを確認することが大切です。

インソールを入れたら靴がきつくなった?

これは比較的よく起こります。

特に、もともとの中敷きの上から新しいインソールを重ねてしまうと、その分だけ靴の中が狭くなります。

インソールによって使い方は異なりますが、もともとの中敷きを取り外して交換するタイプもあります。

新しいインソールを入れたあとには、

・つま先が当たらないか
・足の甲が圧迫されていないか
・かかとが必要以上に浮かないか
・歩いたときに違和感がないか

なども確認します。

 

普段履きとスポーツシューズは同じ?

これも分けて考えた方がいいでしょう。

普段の歩行と、ランニングやバスケットボール、サッカーなどでは、足に加わる力や動きが異なります。

さらにスポーツシューズは、競技によって靴そのものの構造も違います。

そのため、

「このインソールが良かったから、すべての靴に同じものを入れる」

と単純に考えるのではなく、何に使う靴なのかも考える必要があります。

「土踏まずが高い方がいい」とは限りません

インソールというと、

「土踏まずをしっかり持ち上げた方がいい」

というイメージもあるかもしれません。

しかし、アーチの高さだけでインソールの良し悪しを判断することはできません。

足の形や症状、靴、使用する場面などによって条件が違うからです。

また、インソールは足の形そのものを治す万能な道具ではありません。

足や身体にかかる力、靴の中での足の動きなどを考える際の選択肢の一つとして考える方が適切です。

インソールだけですべて解決するわけではありません

足に痛みがあると、

「インソールを入れれば大丈夫」

と思ってしまうこともあります。

しかし、足のトラブルには、靴だけでなく、運動量、身体の使い方、筋力、関節の動きなど、さまざまな要素が関係する場合があります。

そのため、

足 → 靴 → インソール → 動き

をまとめて考えることが大切です。

インソールだけに頼るのではなく、「なぜそのインソールを使うのか」を考えて選びましょう。

まとめ

インソールを選ぶときは、インソールだけを見るのではなく、靴との相性を確認することが大切です。

特に、

靴のサイズは合っているか
インソールを入れて窮屈になっていないか
靴の用途に合っているか
歩いたり走ったりしたときに違和感がないか

などを確認してみましょう。

「高いインソールだから良い」「土踏まずを高くすれば良い」という単純なものではありません。

まず足と靴の状態を確認し、そのうえでインソールが必要なのか、どのようなものが合うのかを考えていくことが大切です。

池上7丁目整骨院では、足の状態だけでなく、普段使用している靴やスポーツシューズなども確認しながら、足・靴・インソールについて一緒に考えていきます。

→【関連記事:扁平足について】
→【関連記事:足の痛みについて】

参考文献

・Mündermann A, et al. Footwear comfort: a systematic search and narrative synthesis of the literature. 2021.
・Reeves J, et al. A systematic review of the effect of footwear, foot orthoses and taping on lower limb muscle activity during walking and running. Prosthet Orthot Int. 2019;43(6):576-596.
・Aboutorabi A, et al. A systematic review of the effect of foot orthoses and shoe characteristics on balance in healthy older subjects. Prosthet Orthot Int. 2016;40(2):170-181.

2026年8月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 池上7丁目整骨院